RIZINの視聴率5.4%だそうで。

 4月16日の、総合格闘技イベントRIZINの、テレビ放送の視聴率が5。4%だった。その前身ともいうべきPRIDEが、一時期は20%そこらの視聴率を獲得していたことを考えると、ちょっと寂しくはある。ただ一方で、現状では人々を引きつけるようなものはないから当然であるとも思う。格闘技放送を見なくなって長いし、UFCその他の団体の結果もスポーツナビでざっと見るだけになったけど、逆にそのせいで以前とは別の視点で見られるようにもなった気がするので、その視点で書いてみる。

  「試合がつまらないから視聴率が取れない」とか、「実力ある選手を出さず昔の人気選手を名前だけで出しているから人気が出ない」とか、格闘技ファンはしばしばそう言って批判する。確かに、退屈な試合展開になればチャンネルを変えてしまう人も多いだろうし、いまの若くて強い選手の試合のほうが見ていて面白いという面もあるだろう。しかし、「面白い試合なら見てくれる」という発想そのものが格闘技ファンのそれであり、関心を持っていない層はそもそも見ようという考えそのものがない。もっと別の理由によって、視聴率は低くなっていると僕は思う。

 つまるところ、一般層が興味を持つものは2つ。一つは「日本vs世界(主にアメリカ)という構図」、もう一つが「世界一を感じさせるスケール」である。

 そもそもスポーツ観戦というのは、その競技にある程度以上詳しかったり経験したことがあればともかく、そう面白いものじゃないと思う。知らない人にとっては、マラソンだの短距離走だのといった競技は結局走ってるだけだし、サッカーは球を蹴って走ってるだけ、野球に至ってはルールが複雑な上に動きが少なくて見ていて退屈である。無料で見られるテレビ放送ならばBGMがわりにつけておくことがあるとしても、わざわざゼニ払って見ようとする人の割合はかなり少ないだろう。

 そういったスポーツでも、たとえばサッカーであればワールドカップはそれなりの視聴率を取る。ワールドカップをテレビで視聴する人たちの中で、Jリーグや海外サッカーの試合を日常的に見ている人や、そこまででなくてもネットやテレビでJリーグの結果くらいはチェックする人の割合は、果たしてどれくらいだろうか。代表に選ばれた選手が、いつもはどこのチームでどんなプレイをしているかを知っている人は、正直ごく僅かだろう。

 その他、陸上競技や体操ならオリンピックはテレビ放送され、それを視聴する人はそれなりにいる。こちらはというと、そもそも代表選手が日頃どこで何をしているかを把握している人はほとんどいないのではないだろうか。僕自身よく分かっていない。

 ワールドカップやオリンピック、野球も含めるならWBCに共通するのが、上に挙げた2つの点である。高校野球で自分の出身地の高校を応援するように、自分の国への帰属意識や愛着から日本代表チームを応援するという人は少なくない。まして、その相手がたとえばアメリカとか、サッカーならブラジルとかドイツのように、実力ある選手を多く抱えたチームならさらに応援したくなる。

 加えて、オリンピックやワールドカップというのは文字通り世界一を決める大会である。見る側としては、たとえばアジアなどの地域の中でのトップを決める大会よりも、勝ち上がれば世界一になれるような大会のほうが、そのスケールを感じることができる。仮に似たような選手が出て似たような試合をしたとしても、視聴率は大きく違ってしまう。

 こういった「日本vs世界」、「世界一のスケール」を、十数年前の日本の格闘技団体は持っていた。たとえばK-1というキックボクシングのイベントは、もちろん他に大手団体がなかったというのもあるんだけど、少なくともヘビー級に関して言うなら間違いなく世界最高峰だった。その中で、時には判定やマッチメークで贔屓されながらも、日本人選手がそこに食い込んでいた。

 K-1はフジテレビやTBS,日テレなどの放送局と契約し、放映権料を得ていたため、、ファイトマネーや優勝賞金も海外の他団体とは桁違いだった。テレビ放送を打ち切られる数年前ですら、海外の大手団体のファイトマネーはK-1よりずっと安かったと選手たちは話していた。また海外展開という面においても、日本やアメリカをはじめとした世界中で予選を行っていたので、実力さえあればそこから勝ち上がって優勝賞金を手にすることも可能だった。実際にそれを成し遂げた選手も存在した。

 PRIDEもほぼ同様に、テレビ放送の放映権料でファイトマネーを釣り上げ、世界でも最高レベルの選手を集めることができていた。アメリカの大手団体であるUFCが今ほどの地位を確立する前だったこともあり、有名選手がPRIDEに集まって鎬を削っていた。その頃の選手たちの中には、10年経った今でも現役でしかも強豪として戦っているのもいる。「世界最強」だとか「60億分の1」といった当時のキャッチフレーズは、誇張だとしても嘘とは言い切れなかった。

 こういった状況が崩れたのは、UFCが現在のようなスタイルを確立した頃からだと思う。「無料放送で選手たちの宣伝をし、有料放送を売る」という方法で、収入を得ることを確立したことで、UFCは安定して収入を得ることができるようになり、選手へのファイトマネーも増加していった。これに加えて日本では放映権料が低下したこともあり、各団体は資金繰りが悪化してついにはPRIDEは消滅し、K-1も今では細々と続くのみになっている。

 いま、RIZINに出ているのは、かつてPRIDEなどで戦っていたベテラン選手や(悪く言えばロートル)、他の団体から1試合限定などの契約で借りてきた選手である。世界のトップどころを呼べるような資金力はない。日本vs世界の構図はまだしも、「こいつが一番世界で強いヤツ」とか、「このトーナメントで優勝した奴が世界一」といったスケール感、言い換えるならブランドイメージが存在しない。いくらいい試合を見せたところで、そもそも関心を持ってもらう、見てもらうだけのものがないのでは、正直先行きは暗いだろう。

 じゃあ、どうすれば良いのかって?そんなもの興行を打つ側が考えることであって、僕が考えることじゃない。というか、僕が考える事なんて、良くてそういった人たちが既に考えてボツにしたことだろう。

 

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170417-00000100-dal-fight