森敦の『月山』

昨日、私はこう書いた。

「私に興味があるのは、紀元前5世紀のインドでの誕生以降、東西南北に伝播していった仏教は、その各地でどういう民俗要素に修飾されて根づいていったか、だ。例えば、原始仏教以後に、言語によらない神秘的儀式の密教の要素を強めた時期の仏教は、チベット平安時代の日本とモンゴルに代表的に残ったとされている。」

日本の風土における仏教の偏差、あるいは日本的変形とは、平安仏教密教修験道などの山岳他界信仰などにより、一部の地方と人々では、独特な性格を持ったことだ。

その風土性と性格が、土俗の習俗と溶け合って独特の空気を生んでいる土地が山形の月山、鳥海山地方なのではないかと思う。

森敦が戦前の旧制一高以来40年以上の人生放浪を経た後で74年に書いた『月山』は、見事にそれらの、土地と人々を覆う濃密な神秘主義の気配が書き込まれている。

その小説の冒頭には、森が次の孔子の言葉を置いている。

未ダ生ヲ知ラズ

焉ンゾ死ヲ知ラン

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