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STARDUST FIVE-103

∽∽RED EYES∽∽

★THE STAR☆DUST FIVE★

Episode.103

「Mission of the battleship」

「…最後の切り札

 なんてプレッシャーかけ過ぎよね?

 アナタが気負う必要はないわ。

 こちらの指示に従って変身、

 巨人化後に目の前のトリガーを握って、

 全力でエネルギーを注ぎ込めば良い。

 エネルギー充填後は

 こちらのタイミングで操作するわ。

 アナタはエネルギーを注ぎ込むことにだけ

 集中してくれれば良い。

 …大丈夫。

 理論上は、ここから月だって破壊できる。

 そーんな威力ありすぎても逆に困るけどね。

 とにかく超々大型巨人くらい

 余裕で吹き飛ばせるわ。」

そんなユウキ隊長の説明を通信で聞いているのは、大きな拳銃のような形状に変形したJSMR怪獣対策本部基地甲板上のサエキ隊員。海面より僅かに上昇した本部基地は、ウルティメイトアタックモードと銘打たれた、巨大な砲台型の戦艦へと変形していた。略称を、『戦艦ウルティメイト』とする。

時は既に地平線から太陽が顔を出し、明るくなってきた頃。巨大化し続ける超々大型巨人ツガイは、約3500メートルを越えていた。それ以上は細かい数字を示すのも馬鹿らしい。意味がないのである。とにかく大きい。ニッポンで一番大きな山と同等、或いはそれ以上の物体。県をまたいでだいぶ遠方からでも、その姿を確認できてしまう。そんな山のような巨人が、都心部を横断しているのである。進路上の全てを破壊しながら…。

「…目標、

 間もなく東京湾に進行します。

 作戦ポイントまであと5分弱です。」

オペレーター・タザキ隊員が落ち着いて報告するも、その通信を聞いている本作戦参加者は、誰も落ち着いてはいなかった。サエキ隊員をリラックスさせようと声をかけるユウキ隊長もその実、喋って緊張を紛らわしていたのやも知れない。だが作戦は予行練習できぬ一発勝負。ブルーチームのファイターWX2機とチーム・イエローのファイター2機は、作戦ポイント上空にて移動型空間相転移シールドをばらまいて旋回中。カントリーバリアシステムの発動もボタンひとつで可能な状態でスタンバイ。やれることはやった。後は作戦決行を待つばかり…。

「…目標、

 東京湾に進行しました。

 海面水位変化安定後、

 速やかにシールド展開願います。」

人間が水溜まりに一歩踏み込むだけで水飛沫が飛ぶ。約3500メートル級の巨人が湾内に侵入するとなれば、急激な海面水位の変化は容易に想像できよう。人間のスケールで言えば、超々大型巨人から見た湾内は、庭先に設置する空気を入れて作るビニールのプールのようなものである。ヒト一人飛び込めば、溜めた水は溢れ出す。

しかしそれは想定の範囲内。その被害は今、防いでいる場合ではなかった。あくまで超々大型巨人の全質量を防ぐことにだけ、シールドの力を利用しなければならない。

「…カントリーバリアシステム発動!!

 同時にファイター全機、

 移動型空間相転移シールド展開!!」

ユウキ隊長の号令と共に、一斉に全てのシールドシステムが発動される。東京湾の地形を利用して作り出されたすり鉢状のシールドが、超々大型巨人を取り囲む…。

「…サエキ隊員、

 今よ変身して!!」

ユウキ隊長の指示に頷いたサエキ隊員は、迫り来る超々大型巨人に向けていた視線を上空に逸らし、胸に手を当て拳を握り締め、そして天にかざした。

「!!」

瞬間、背負う朝陽よりも眩き太陽の如き閃光が周囲を照らすと、その直中で紅き巨人が描き出される。全長50メートル級、トゥエルヴ・タイプDの出現である。

「…聞こえているなら頷いて!!

 さあ目の前のトリガーを握り締めて!!

 アナタの活動限界1分30秒!!

 でき得る限りのエネルギーを注ぎ込んで!!」

戦艦ウルティメイトより僅か上にふわりと浮いて出現したトゥエルヴDは、ユウキ隊長のメッセージを思念波として受け取ったようで、ひとつ無言で頷いて返した。そしてゆっくりと降下し、全長500メートル級の戦艦ウルティメイト艦尾の、左右に分かれたエンジンの排気口のような箇所に両腕を突っ込んだ。それがエネルギーを注入するトリガーとなる。

刹那、トゥエルヴDの肉体が、一回り膨張したかのように、怒気を発した。そして漲るオーラをまとい、猛々しい咆哮と共にエネルギー注入を開始した。

「…エネルギー充填始まりました。

 波長確認、パターン・サンリウム。

 システムは正常に起動中。

 ラームシステム発動、

 エネルギー変換始めます。」

すると戦艦ウルティメイトの船体中央部の巨大なシリンダーのような構造物が、ゆっくりと回転を始めた。その中で、トゥエルヴDから注入されたエネルギーを正反物質消滅作用に応用する為、プラスとマイナスに変換する作業が行われていた。回転が早まるにつれ熱を帯びていく。冷却作業も同時進行していて、大量の蒸気が放出されていた。

その間も、超々大型巨人ツガイの歩みは止まらない。緩慢だが、その一歩が海面を揺さぶり大波荒れ狂う。しかし既にシールドシステムが囲っている為、その中で行き場のない波が舞い上がり、シールド内は嵐の直中のような状態であった。

「…エネルギー注入1分経過。

 既に想定エネルギー量の限界を越えています。

 これ以上はシステムダウンの危険があります。」

一方、戦艦ウルティメイトは穏やかな海面状に浮いていたが、高速回転するシリンダーが今にも爆発する勢いであった。艦体全体に負荷がかかっているようで、あらゆる箇所でショートしたかのように稲光りが発生していた。

「…依然問題なし!!

 エネルギー充填量十分だわ!!

 サエキ隊員離脱して!!」

そう叫ぶユウキ隊長の手には、デスクに繋がった大型ライフルのようなもののグリップが握られていた。彼女は戦艦ウルティメイト甲板上艦尾に位置する、まるで拳銃の照準器のような、メインルームとなるコックピットに唯一人残っていた。彼女が見る巨大なモニター上に映る超々大型巨人には、手元の大型ライフルと連動するように、照準が重ねられていた。主砲照射は、彼女の手に委ねられていた。

ブルーチームメンバーはファイターWXに搭乗。他に本部基地で働く人員達は皆、避難させていた。キサラギミライやアカバネユウト、囮に利用することになった少女コトリ・アレイ。ユウキ隊長を除く全ての者は、戦艦ウルティメイト移行時に分離したBS艦に移動していた。それは本部基地甲板上のピラミッド型の建造物である。それ自体が空中移動要塞型戦闘機となる。

オペレーター・タザキ隊員も、BS艦に搭乗している。彼女のオペレートルームは元からBS艦に設置されており、そこが心臓部として機能していた。分離しようとも、彼女の指先ひとつで、戦艦ウルティメイトは安定して遠隔操作される。但し主砲発射だけは、どうしても戦艦ウルティメイトで操作する必要があった。超膨大なエネルギーを扱う為、危険な作業であることは間違いなく、だからユウキ隊長唯一人が残ったのである。

BS艦は戦艦ウルティメイトの遥か後方、太平洋上にて待機していた。しかしコトリ・アレイは超々大型巨人を誘導する為の囮である。BS艦で避難したと言っても、超々大型巨人と戦艦ウルティメイトを結ぶ直線上に位置している必要がある。だから超々大型巨人が目標と定めているのは戦艦ウルティメイトではなく、その遥か後方BS艦ということになる。だが何せ広い太平洋、十分な距離は保たれている筈、である。

「…主砲発射準備、

 最終段階へ移行されました。

 いつでも撃てます。」

あくまで冷静なタザキ隊員の報告。前後して戦艦ウルティメイトでは、平たい甲板上の艦体中央から艦首にかけて割って出る長い砲身が、僅かに移動して、回転するシリンダー部分と連結されていた。そして艦首から突き出すハンマー、撃鉄のような箇所が起こされていた。戦艦ウルティメイトは、一発の弾丸=エネルギーの塊を撃ち出す為に、リボルバー型の拳銃のような形状をしているのである。

「…3カウントで照準直線上の

 シールド解放よろしく!!」

それはつまり超々大型巨人を狙い撃つ為に、すり鉢状に展開したシールドに穴を開けるということ。

「…スリー!!」

その微妙なコントロールを可能とするのが、移動型空間相転移シールドシステムなのである。

「…ツー!!」

空中にばらまかれた小型シールドの位置や角度を調整することで、より細やかなコントロールが可能となる。

「…ワン!!」

はたして超々大型巨人と戦艦ウルティメイトを結ぶ直線上、すり鉢状のシールドに穴が開いた。戦艦ウルティメイトから狙うユウキ隊長の視点からして、超々大型巨人と目が合う瞬間。

「…ウルティメイトアタック発射!!」

ユウキ隊長はトリガーは引いた。その引き金は疑似的なものであるからして軽かったが、その結果、主砲から照射された超極太エネルギー砲は、その余波で海を引き裂くかの如く、そして空いたシールドの穴に吸い込まれるようにして、目標である超々大型巨人に命中した。

「…シールド再び展開!!」

ファイターWXのカザマ隊員の怒号と共に、間髪入れずにすり鉢状のシールドの穴が塞がれた。そのシールド内は、肉眼では勿論のこと、モニター上でも、一切の確認が取れない状態。数値的には、その中に表示できぬ程の天文学的数値のエネルギーが充満している、ということしか把握できない。一切のメーターが振り切れて、何も確認ができなかった。恐らく巨人はおろか海水に至るまで、全てが蒸発している筈、であった。

「…シールド上部解放!!

 エネルギーを逃がします!!」

チーム・イエローのファイターからの報告。そしてシールド上部から噴き出すエネルギーが、大気圏外にまで放出されていく。

「…主砲エネルギーと

 超々大型巨人の質量と

 思わしき粒子の放出を確認。

 シールド内安定まで凡そ20秒です。」

大気圏外まで突き抜けていくエネルギーと、その勢いに乗って粉雪のように舞い上がる粒子。ここまでは全て作戦通りであった。しかし…。

「…放出される質量の数値が、

 …おかしい。

 …こんな筈じゃない。

 …こんな、

 …こんな少ない筈がありません!!」

淡々とオペレートしていたタザキ隊員の口調に、明らかな狼狽が感じられた。しかしそれは、その場にいた誰もが感じていることであった。徐々に視界がクリアになるにつれ、そこに未だ人影、いや超々大型巨人の影が窺えたのだから…。

…こんなもんか

そこには、頭を抱え込むようにして腕を組んだ防御姿勢の、超々大型巨人がいた。しかしその姿は、先までとは違っていた。

…アーマーに守られたぜ

一見してシルエットが違う。左肩の大きく張り出た鎧がない。全身の鎧が、全て失われていた。徐々に腕を下ろすと見え始める頭部。そこに灯る眼光は、赤く煌めいて…。

…まあよくやってくれたもんだな

超々大型巨人の巨大化現象とは別に、筋肉が膨張していくのがはっきりと確認できた。一皮剥けるように、全身がひび割れていく。瓦礫のようにこぼれ落ちる皮膚片が、肉体から離れた途端に本来の質量となって破裂する。しかし海に落ちるよりも早く消滅していく。その光景は、まるで全身至る箇所で小さな爆発が起こっているかのようで…。

…アイツの意識は吹き飛んだ

黒光りする皮膚が見え隠れするその姿は、もはや『ツガイ』ではなかった。

…オレは自由だ

刹那、超々大型巨人が跳んだ。

…だがな

その質量からして予想だにできない、地球上の重力を無視した行動に誰も反応ができなかった。

…アイツを傷付けて良いのは

すり鉢状のシールドは、その圧倒的な物体の前では薄皮でしかなかった。

…オレだけなんだ

そもそも空間相転移シールドは、エネルギーに対しての絶対的な防御壁である。山のような物体が内側から動けば、それを止めることができる筈もなく…。

…アイツの痛みは

黒く変質した超々大型巨人が跳んだ先は、戦艦ウルティメイトの目の前。

…オレの痛み

着水と共に大爆発したかのような水柱が立ち昇り、何もかもが見えなくなってしまう。

…少しばかり痒かったぜ

そこを起点に広がる波紋が全世界、地球中に伝わっていく…。

…虫けらの分際で

やがて見え始めた超々大型巨人の影は、右手に何かを持っていた。

…面白いオモチャを

それは拳銃のような形状の、戦艦ウルティメイト。

…持っていやがるな

文字通り拳銃のように握り締めて、その銃口を自分の頭部こめかみに当てがっていた。

…もういっぺん撃ってみろよ

トリガーを引くような指の動きをするも、実際そこに引き金は設置されておらず、艦体底部がばりばりと音を立てて潰されていくばかり。戦艦には依然、ユウキ隊長が残っていて…。

「…タイチョオオオオオオオ!!」

刹那、紅い閃光が超々大型巨人に向かって上昇していく。それは活動限界残り僅かなトゥエルヴD。活動限界だけではない。ほぼ全てのエネルギーを戦艦ウルティメイトに注ぎ込んだ後である。それでも標高約3500メートルの山を登るかのように飛び、その手に握られた戦艦を奪い返さんと…。

「!!」

瞬間、トゥエルヴDは海に叩き落された。超々大型巨人の振った左手で、正に虫けらの如く叩き落されたのである。海中落下で衝撃が和らいだのも束の間、超々大型巨人の脚がゆらりと持ち上がったかと思うと、追い打ちをかけるように踏み抜かれた。海底にめり込んで尚、止まらぬ圧力。

光の巨人の肉体構造からして血が通っているのか、骨が臓器があるのか定かではないが、肉体の内側その内容物が粉砕された上で、皮膚を破ってぶちまけられてしまったかのような、圧倒的な圧力。超重力と言っても過言ではない。ぺしゃんこ、としか表現のしようがない。その足ひと踏みたった一撃で、トゥエルヴDは致命的なダメージを受けたことだけは確かであった…。

…ガイ

…オレはガイスト

…もう一人の『ツガイ』だ

それは黒鉄の巨人。JSMRが長年の経験則を元に総力を上げて考証した末に辿り着いた『巨人の力場』という仮説からなるウルティメイトアタック作戦を、痒かったの一言で済ましてしまう存在。

そもそも本作戦は、無意識化で巨人化した挙句に巨大化し続ける巨人、ツガマモル=ツガイが対象であった。『巨人の力場』を巨人として当然の権利として行使していたなら、話は全く別である。

例えどんなサイズの巨人であったとしても、全長3500メートル強の超々大型巨人であったとしても、巨人であることを自覚して立ったなら、その世界は巨人を受け入れなければならない、受け止めなければならないのである。その為に必要なのが、『巨人の力場』という世界のバランスを保つ力場。

…もう一人のオレが

…ヒトとして生きて遊べていた世界

…壊したのはオマエ等だ

ヒトであったツガマモルとは違う。ガイは、ガイストは、巨人であることを自覚している。ならばこの世界は、巨人として受け入れざるを得ない。つつけば破裂するゴム風船のような脆弱な防御力では巨人でいられないと言うのなら、相応の防御力が備わってしまう。身にまとう鎧は、鎧として防御力を発揮することになる。跳ばんとすれば、跳べるだけの重力に変動せざるを得ない。溢れ出す本来の質量が巨人であることの妨げになるのなら、消滅させるしかない。

…覚悟しろ

…ぶち壊してやる

巨大化し続ける巨人という未曽有の脅威は、巨人として受け入れることで、この世界自身が防いだ格好となる。だがしかし、結果的に世界を破壊する凶悪な破壊神を召喚したことに違いはなかった…。

〜つづく〜